外航貨物保険でのクレーム処理(てん補責任の有無の判断など)は簡単ではありません。保険約款だけではなく準拠法(約款の基礎となる法律)も参照しなければならず、準拠法にも多くの種類がある等のためです。

ここでは、保険クレームの複雑な仕組みを簡単に理解するために、貨物運送に関わる各種の契約が「どのような法体系」で構成されているかを知る参考になればと思います。

この表の目的は、運送契約および保険契約上の責任範囲を規定したそれぞれの約款がどの法律・条約と結びついているかをご理解していただくこと、また、それぞれの約款には異なった準拠法があるためにクレームの対処法も違ってくることをご理解していただくことにあります。

契約の種類 適用約款 準拠法 備考
外航貨物
海上保険
日本では協会貨物保険英文約款を使用。
独自の約款を作って使用している国もある。
保険金請求に関する責任とその決済に関しては、英国の法律(Marine Ins. Act)と慣習に準拠。

上記以外の契約の成立や保険料支払い等に関しては商法(日本法)に準拠。
日本と英国とでは約款の解釈に違いが生じることが往々にしてあり、日本の方が契約者に有利となるケースが多い。
内航貨物
海上保険
日本の保険業界では標準的な貨物保険和文約款を使用している。 2010年公布の保険法(日本法)
国内運送保険 日本の保険業界では標準的な貨物保険和文約款を使用している。 2010年公布の保険法(日本法)
外航運送
(船荷証券)
各種のB/L約款 Hague RulesおよびHague-Visby Rules
日本においては国際海上物品運送法および商法
信用状取引においては、有価証券である船荷証券が不可欠となる。
外航運送
(Sea WayBill)
各種のWayBill約款 信用状取引においては、有価証券である船荷証券が不可欠となる。 WayBill約款にHague RulesおよびHague-Visby Rulesを取り入れていることが多い。
契約の種類 適用約款 準拠法 備考
外航運送
(Surrender B/L)
裏面約款が明示されていないことが多い。 裏面約款がないと法律的な裏付けがないために運送人と荷主間の責任問題が不明確。
日本においては国際海上物品運送法が適用される。
Surrender B/Lは主に日本、韓国、中国の実務で利用されているが、国際条約が適用されず法的には不透明。
共同海損 各種のB/L約款 York Antwerp Rules
ヨーク・アントワープ規則
共同海損の成立要件、共同海損費用の範囲等を定めた国際規則
航空運送
(Air WayBill)
各種のAWB約款 ワルソー条約およびモントリオール第4議定書 日本において損害賠償の訴訟が起こされた場合は国内法が適用される。