1.保険価額
保険価額とは、貨物に損害が発生した場合に、その損害額を算定する基礎となる貨物の評価額です。
外航貨物海上保険では、売買契約上の貨物価格、運賃、保険料その他の費用を基礎として、 被保険者と保険会社との間で保険価額を協定します。
契約時に保険価額をあらかじめ協定し、その協定価額が保険証券に記載されている保険証券を、 評価済み保険証券(Valued Policy)といいます。
協定された保険価額は、原則として保険期間中の貨物価値を判断する基準となり、 損害発生後に市場価格の変動などを理由として自由に変更するものではありません。
英国海上保険法における保険価額
英国海上保険法1906年(Marine Insurance Act 1906)第16条では、 貨物の保険価額について、貨物の原価に、船積みおよび輸送に伴う費用ならびに 保険料を加えた額を基礎とすることが規定されています。
また、同法第27条では、保険の目的物の価額を契約当事者間であらかじめ協定し、 その協定価額を保険証券に記載する評価済み保険証券について規定しています。
実務上は、インボイス価額に運賃および保険料を加えたCIF価額を基礎として、 期待利益や輸入後に発生する諸費用などを考慮し、CIF価額の110%を保険価額とする方法が 広く用いられています。
【ポイント】
一般的な外航貨物海上保険では、次のように保険価額を設定します。
協定保険価額 = CIF価額 × 110%
この110%には、貨物が無事に到着した場合に得られると見込まれる利益や、 事故によって失われる可能性がある付随費用などを一定範囲で含める考え方があります。
ただし、110%はすべての貨物について法律上強制される割合ではありません。 貨物の種類、売買条件、輸送内容、保険会社の引受条件および個別契約によって、 異なる割合を設定する場合があります。
2.保険金額
保険金額とは、その保険契約において、保険会社が損害を補償する限度額として設定する金額です。
通常の貨物海上保険では、協定保険価額と同額を保険金額として設定します。
協定保険価額 = 保険金額
保険価額と保険金額の関係によって、全部保険、超過保険または一部保険に区分されます。
| 区分 | 保険価額と保険金額の関係 | 実務上の取扱い |
|---|---|---|
| 全部保険 | 保険金額と保険価額が同額 | 通常の契約形態です。保険条件に従い、保険金額を限度として損害が補償されます。 |
| 超過保険 | 保険金額が保険価額を上回る | 実際の保険価額を超える部分について、保険による利益を得ることはできません。 損害額を超えて保険金が支払われるものではありません。 |
| 一部保険 | 保険金額が保険価額を下回る | 被保険者が不足部分を自己負担しているものとして扱われ、 分損の場合には保険金額と保険価額の割合に応じて保険金が減額されることがあります。 |
【ポイント】
一般的な貨物海上保険では、次の関係になるよう保険を設定します。
協定保険価額 = CIF価額 × 110% = 保険金額
3.CIF価額が確定していない場合
FOB条件やFCA条件など、インボイスに海上運賃や保険料が含まれていない場合は、 貨物価格に運賃および保険料を加算してCIF価額を算出します。
保険料を計算するためには保険金額が必要であり、保険金額を算出するためには 保険料を含むCIF価額が必要になるため、実務上は所定の計算式を用いて保険金額を算出します。
使用する保険料率、加算する運賃、期待利益の割合、通貨および換算レートについては、 保険契約や申込内容に従って確認する必要があります。
4.保険価額を設定する際の注意点
保険価額を低く設定すると保険料は低くなりますが、事故が発生した場合に十分な保険金を 受け取れない可能性があります。
一方、実際の貨物価値を大きく超える保険金額を設定しても、 実際に発生した損害額を超えて保険金を受け取ることはできません。
保険手配時には、インボイス価額だけでなく、売買条件、運賃、保険料、 通関後に発生する費用、期待利益および貨物到着後の再調達費用などを確認し、 貨物の実態に合った保険価額を設定することが重要です。
個別の保険価額、保険金額および保険料の算定方法は、包括予定保険契約、 個別保険契約、貨物の種類、輸送区間および保険会社の引受条件によって異なります。