ホーム > 外航貨物海上保険 Q&A >

外航貨物海上保険の事故処理・求償・運送人について Q&A

外航貨物保険の事故処理
Q1.事故があったら、先ず、どうすればよいですか。
Q2.事故があったら、貨物は動かせないですか。損害が生じた貨物は処分してよいのでしようか。
Q3.日本から輸出した貨物の事故処理は、どうすればよいのですか。
Q4.全損と分損とはなんですか?
Q5.鑑定人とはどんな人ですか、また、どうやって手配するのですか?
Q6.事故が起きて保険金が支払われるかどうかは、保険会社は、どのようにして判断するのですか。
Q7.コンテナの天井に損傷があり一部の貨物が濡れていた場合の保険金は支払われますか。
Q8.コンテナには損傷がありませんが、結露が発生して貨物が濡れていた場合はどうなりますか。
Q9.破損や曲損・へこみなどは、損害発生場所の特定が困難だと思いますが、どのような場合に免責になりますか。


外航貨物保険の求償
Q1.保険会社より保険金を払ってもらった後に、運送人に対して損害賠償請求をできますか。
Q2.輸出取引で高額貨物の国際輸送を請負いました。運送人としての取扱(House B/L上の記載は、仕出港から仕向港)は、日本国内の倉庫から現地の最終倉庫までです。事故に備え荷主が手配した外航貨物海上保険に、「求償権放棄特約」を条件に輸送契約を締結しました。この特約の注意点はなんでしょうか。
Q3.包括予定保険の個々の輸送に関わる確定通知を遅延又は脱漏があり、事故が起きてしまいました。この場合どうなりますか。
Q4.フォワーダーがHouse B/Lを発行する案件で NVOの顧客先が付保した外航貨物海上保険では、たとえ求償権放棄先として当該NVO名が明示されていたとしても、国際間の海上輸送中に起因した貨物損害が発生すれば、客先に保険金を支払った保険会社からは当該NVOは代位求償を受けてしまう可能性があるのでしょうか?
Q5.承認書(委任状)はどのような内容なのでしょうか。
Q6.A4の特約の一例の『... against the Inland Carriers ... 』と在る箇所は 例えば against XYZ Logistics Corp. の様に具体的なNVOの社名だけを挙げて作成される事は有り得るのでしょうか? それとも必ず Inland との表現が付いて回るものなのでしょうか? 若しくはたとえ Inlandの文言が無くとも国際的には、当該業者の請けた全輸送区間の内、Inland 輸送部分に限定して - と読まれるものなのでしょうか?
Q7.船主責任制限制度 −「船舶所有者等の責任の制限に関する法律」とは、どのような制度ですか。
Q8.船主責任制限訴訟における債権届出手続について
Q9.荷送人によりB/Lオリジナルを元地回収(Surrender)して日本へ商品を輸入したのですが、航海途中で外航船舶のトラブルにより貨物が投げ荷により全損になってしまいました。 外航貨物海上保険は日本にて手配をしていましたが、手元にB/Lがない(実際にBLは発行されておらず、表面のみのコピーを入手)場合に貨物海上保険の保険金請求は可能でしょうか。




外航貨物保険と運送人
Q1.保険に加入せず、航海中に事故が発生した場合に運送人に対して損害賠償請求をできますか。
Q2.引渡しを受けた貨物に損害発覚後、運送人に対しては、いつまでに、通知をしなければなりませんか。
Q4.損害発覚後、運送人に対しては、いつまでに、損害賠償請求(賠償責任の消滅)をしなければなりませんか。
Q4. 自社のBLを代理店に貸出する際、事故起った場合、賠償責任はBL貸出主にありますか?BLを発行した貸出先の代理店にあるのでしょうか。その場合貸出元のBL保険でカバーできますでしょうか?
Q5.L/C取引でClean B/L要求されています。その場合に輸出者(荷送人)がL/I(Letter of Indemnity)の差し入れにてClean B/Lを入手した場合の処理について
Q6.Waiver of subrogationでCarrierを対象とできず、Inland Carrierのみ対象となるのは、どうしてですか?
Q7.Q6のCarrierには利用運送人(NVOCC)も含まれるのでしょうか。




外航貨物保険の事故処理

Q1.事故があったら、先ず、どうすればよいですか。

A1.

<保険会社・代理店に対して>
ご一報を入れて事故の通知をしてください。

<当事者として>
貨物をそのまま放置した場合の損害拡大を防止する処置を取ってください。

<運送人に対して>
損害賠償求償権を保全するために損害通知「Claim Notice」を運送人宛に書面で提出してください。
各保険会社に損害通知「Claim Notice」の雛形はあります。宛先はB/L上の運送人宛です。
外資系の場合で日本に支店等がない場合は、日本に「運送人の代理店」がありますので、そちらに郵送またはファックスしてください。

損害通知は、海上輸送の場合は、貨物受取りの日から3日以内で、航空輸送の場合は、貨物受取りの日から14日以内です。
運送人に対するクレーム通知は荷主の義務として規定されていますので、この旨が適切になされていない場合は、保険金のお支払いができなくなったり、保険金の一部を控除させられる場合もありますので、注意が必要です。




Q2.事故があったら、貨物は動かせないですか。損害が生じた貨物は処分してよいのでしようか。

A2.事故の内容によります。例えば、不着や抜き荷等の数量的損害であれば、受渡し書類等の関係書類で保険金の損害処理がされます。
その場合は、良品についてはご商売の納期もありますので、商流に乗せてよろしいと思います。
ただし、関係書類等で漏れがあり立証されない事を想定して、写真や損害の状況の詳細を時系列的にまとめておくことをお勧めします。

また、水濡れや破損等の質的な損害の場合は、損害の原因調査や損害額の確定のために鑑定人の検査が必要となります。
この場合に検査まで貨物をそのままに保管しておく必要があります。処分等をする前に保険会社に確認する事をお勧めします。




Q3.日本から輸出した貨物の事故処理は、どうすればよいのですか。

A3.通常、危険負担が輸入者に移転したあとの事故であれば、被保険利益も輸出者から輸入者に移っているため、海外の輸入者により保険会社の現地法人や支店、または保険会社の指定する損害査定代理店にクレームの手続きを行なう必要があります。一般的には、証券上に仕向地の損害査定代理店の連絡先が記載されています。また、なんらかの理由により、輸出者が日本で保険金の支払を受けたい場合には、輸入者よりの委任状が必要となります。




Q4.全損と分損とはなんですか?

A4.全損、分損それぞれの意味は下記の通りです。

(1) 全損
全損は絶対全損と推定全損の2種類に分けられますが,いずれの場合も保険証券上の保険金額が支払金額となります。

@ 絶対全損
積載船の沈没等で貨物を救助できない場合や冷凍貨物が完全に解凍・腐敗して全く使用できない場合、船や航空機が相当な期間以上消息を断った場合などがこれに当ります。

A 推定全損
航海中に本船が損傷を被り修理できないために途中で航海を打ち切ってしまい、貨物をそこから仕向け地へ輸送する費用が貨物の価値を超える場合が該当します。

(2) 分損
分損とは貨物の一部分に損害が生じた場合を言います。




Q5.鑑定人とはどんな人ですか、また、どうやって手配するのですか?

A5.貨物保険の場合には、鑑定人として専門の海事検査人(サーベイヤー)を起用するのが原則です。サーベイヤーを起用し第三者による損害の立証を行うことは、特に運送人への求償が必要な場合には必須となります。
またサーベイヤーの専門知識や経験を必要とする事故もままありますので、損害発覚時には保険会社に連絡して、サーベイヤーの依頼の有無を確認してください。
被保険者(荷主)により、サーベイヤーを依頼することも可能ですが、実務的には保険会社が直接依頼するのが一般的となっています。




Q6.事故が起きて保険金が支払われるかどうかは、保険会社は、どのようにして判断するのですか。

A6.保険金が支払われるためには下記の要件に該当する必要があります。
@保険期間内の事故であること
A偶然で外来性があること
B免責の損害ではないこと

以上をもとに保険会社の損害査定部門が検証いたします。




Q7.コンテナの天井に損傷があり一部の貨物が濡れていた場合の保険金は支払われますか。

A7.ICC(A)条件で保険に加入していた場合で、損傷部分より雨等が浸入して貨物に濡損が発生したのであれば、お支払の対象となります。
ただし、注意する事はFCLの貨物でShipperによるコンテナ詰めが行なわれた場合で、コンテナの状態をよく確認せずに貨物を詰め込み出荷した場合は、保険の始期が開始する前の事故となりますので、保険金は支払われません。いわゆる「Shipper’s Claim」として輸出者に損害賠償請求を することとなります。




Q8.コンテナには損傷がありませんが、結露が発生して貨物が濡れていた場合はどうなりますか。

A8.コンテナには損傷がなく外来性がありませんので、ICC(A)条件でも支払の対象とはなりません。
結露の原因になりやすい、貨物の性質上水分を多く含んでいる場合(⇒免責:貨物の固有の瑕疵又は性質)、航路季節的要因に帰する結露の発生が不可避な場合、梱包材やパレットの水分含有量が過多の場合などに起因する結露損害は、免責となります。




Q9.破損や曲損・へこみなどは、損害発生場所の特定が困難だと思いますが、どのような場合に免責になりますか。

A9.保険期間内の損害でありながら、次のような場合が考えられます。梱包の不良による損害、積み付け不良による荷動きや荷崩れが原因の場合、過積載による下段の貨物のつぶれなどが免責となります。






外航貨物保険の求償

Q1.保険会社より保険金を払ってもらった後に、運送人に対して損害賠償請求をできますか。

A1.できません。保険会社との契約により保険金を受取る場合に、荷主の運送人に対する損害賠償請求権は、保険会社に承継することとなります。この請求権をもとに保険会社が運送人に賠償請求をすることを「代位求償」といいます。保険会社が代位求償により損害額の一部を返還(回収)できた場合には、その額が当該荷主に支払われた保険金に充当されますので、保険契約者である荷主の損害率の低下(保険成績のアップ)につながります。




Q2.輸出取引で高額貨物の国際輸送を請負いました。運送人としての取扱(House B/L上の記載は、仕出港から仕向港)は、日本国内の倉庫から現地の最終倉庫までです。事故に備え荷主が手配した外航貨物海上保険に、「求償権放棄特約」を条件に輸送契約を締結しました。この特約の注意点はなんでしょうか。

A2.「求償権放棄特約」は、「Waiver of Subrogation」と呼ばれ、運送人に対して保険会社が求償を放棄する内容の特約です。ただし、その効力は国内輸送(仕出地および仕向地)に限られています。国際間の輸送は、元々国際条約等で賠償制限がされていますので、この特約の範疇外となります。
この特約を附すと追加保険料が掛かります。また、求償権放棄先を明示していませんと、実運送人に対しては求償に行きますので、本来の目的と異なるケースも発生いたします。荷主にこの特約を依頼した場合は、必ず保険証券の確認をしてください。




Q3.包括予定保険の個々の輸送に関わる確定通知を遅延又は脱漏があり、事故が起きてしまいました。この場合どうなりますか。

A3.包括予定保険契約が締結されている場合、確定通知の遅延又は脱漏があっても、それが被保険者の故意又は重過失によるものでないことが立証された場合に限り、確定通知の遅延又は脱漏した個々の輸送実績を通知し保険料を支払うことで、保険会社はその損害処理を行ないます。
また、たとえ確定通知の遅延又は脱漏した個々の貨物が無事についた場合でも、被保険者は確定通知を行い、保険料を支払う義務があります。





Q4.フォワーダーがHouse B/Lを発行する案件で NVOの顧客先が付保した外航貨物海上保険では、たとえ求償権放棄先として当該NVO名が明示されていたとしても、国際間の海上輸送中に起因した貨物損害が発生すれば、客先に保険金を支払った保険会社からは当該NVOは代位求償を受けてしまう可能性があるのでしょうか?

A4.求償権放棄特約の内容(文言)一例でございます。
タイトル
Waiver of Subrogation against Inland Carriers appointed by (Assured’s name)
特約内容
Assurer waives subrogation of rights against the Inland Carriers appointed by (Assured’s name) except as to their wilful misconduct, in respect of loss of or damage to the goods hereby insured arising form the inland transportation.

ヘーグビィスビールールの条約に批准している国の船荷証券裏面約款には条約(国際海上物品運送法)に準じた運送人としての責任の項目がございます。その責任を抑える意味でパッケージリミテーションを採用しています。

外航船舶運行中に起因した損害に対しては、この条約が最優先されますので、どの保険会社も対インランドキャリアに対しての求償権放棄特約となっております。

保険会社が国際間の運送人に対して求償権を放棄するのは条約(国際海上物品運送法)違反(*1)になってしまいますので、国内運送人に対しての求償権放棄となります。
(*1)実運送人が第三者との運送契約による場合

但し、実務的には、この特約を付保している場合でNVOが実運送人に対して権利保全をしている状態の場合に 保険会社は、NVOに対して実運送人(Actual carrier)に求償に行くための承認書(委任状)をNVOに送付して、委任の下に実運送人(Actual carrier)に求償に参ります。




Q5.承認書(委任状)はどのような内容なのでしょうか。

A5.体裁はNVOから保険会社宛となります。

一例を挙げますと、下記のようになります。

保険会社宛
We hereby assign to 保険会社名, any and all rights which we may have under bill of lading numbered XXXXXXXXX or howsoever otherwise arising against the carrier and/or ship owner in respect of loss and/or damage to the cargo covered by the said bill of lading.
   委任者(NVO)サイン




Q6.Q4の特約の一例の『... against the Inland Carriers ... 』と在る箇所は 例えば against XYZ Logistics Corp. の様に具体的なNVOの社名だけを挙げて作成される事は有り得るのでしょうか? それとも必ず Inland との表現が付いて回るものなのでしょうか? 若しくはたとえ Inlandの文言が無くとも国際的には、当該業者の請けた全輸送区間の内、Inland 輸送部分に限定して - と読まれるものなのでしょうか?

A6.見かけ上のタイトルは通常against inland carrier・・・ との表現を割愛しているケースが多いです。
また、against XYZ Logistics Corp.against XYZ Logistics Corp.,his agents and subsidiaries company.と固有名詞を表記する方が、より明確となります。

但し、表記の如何に問わず、条約(国際海上物品運送法)で縛られておりますので内容的にはInland carrier に対しての求償権放棄となります。
万が一にも全輸送区間と記載(一般的にはありえませんが)が記載されていたとしても無効です。




Q7.船主責任制限制度 −「船舶所有者等の責任の制限に関する法律」とは、どのような制度ですか。

A7.船舶の運航には数多くの危険が伴い、事故が発生した場合、船社は巨額の損害賠償責任を負う場合があります。海運業の保護育成のため、船舶衝突による損害や貨物損害など船社が負うべき賠償責任を一定程度制限することが認められています。責任制限が認められた場合、船社は定められた責任制限基金を拠出し、一方、債権者は裁判所が認めた債権額の割合に応じて、責任制限基金から分配金を受けとることとなります。
上記法律に基づき、地方裁判所に「船主責任制限手続開始」を申し立て、正式に開始決定がなされます。同時に裁判所は申立人および受益債務者、船舶運行者およびSlot charterersに対して債権を有するものは、債権の存在及び内容等を、指定期日までに当該裁判所に届け出るよう通知してきております。当該期間内に届出がない場合、その債権は失権し、原則として当該手続に参加できなくなります。




Q8.船主責任制限訴訟における債権届出手続について

A8.上記A7手続において、NVOが本船積みを前提としたHouse B/Lを発行した場合、貴社が裁判所へ債権届出を行い、その一部を回収できる可能性があります。

NVOの債権とは、
@ House B/Lを発行したNVOに対して、荷主殿等が運送契約の債務不履行責任に基づき賠償請求する場合、NVO賠償額がそのまま実運送人に対する債権となります。

ANVOに賠償請求がきていない場合、荷主殿は契約関係のない実運送人に対して、不法行為責任に基づき直接賠償請求しているものと思われます。この場合であっても、NVOは後日損害賠償請求を受ける可能性が残っており、NVOの当該債権を保全する目的のため、当該債権の存在及び内容等を裁判所に届け出ておくことが必要となります。




Q9.荷送人によりB/Lオリジナルを元地回収(Surrender)して日本へ商品を輸入したのですが、航海途中で外航船舶のトラブルにより貨物が投げ荷により全損になってしまいました。
外航貨物海上保険は日本にて手配をしていましたが、手元にB/Lがない(実際にBLは発行されておらず、表面のみのコピーを入手)場合に貨物海上保険の保険金請求は可能でしょうか。


A9.日本で外航貨物海上保険を手配されていますので、インコタームズ上の売買契約がFOBかCFRまたはそれに準じる貿易建値で被保険利益があれば保険条件の範囲内で保険金支払いの対象になります。

ただし、当該貨物が到達地である日本には到着していないために 荷受人としては船会社に対して損害賠償請求ができないおそれがあります。したがって、外航貨物海上保険に加入していなければ、求償の手段がなくなります。

また外航貨物海上保険で保険金が支払われたとしても 保険会社は代位求償が困難となることがあり、保険成績の悪化は免れません。





外航貨物保険と運送人

Q1.保険に加入せず、航海中に事故が発生した場合に運送人に対して損害賠償請求をできますか。

A1.はい、損害賠償請求はできます。船会社やフォワーダー等の運送人は、運送契約を締結(船荷証券を発行)していますので、貨物を安全に輸送する責任を負っています。貨物に損害が発生して、その原因が運送会社の責任による場合は、荷主は、運送契約(船荷証券の裏面約款)に基づいて損害賠償請求を行う事ができます。

ただし、損害賠償請求をしても下記のようなケースは免責となりますので、賠償金が回収できるとは限りません。

@航海過失、火災、海上および可航水域に特有の危険、天災・不可抗力、戦争やストライキ等は、免責です。

A商業過失についても責任制限があり、1包または1梱包あたりの賠償金額が制限されています。



一般的には、損害額の一部しか賠償金が回収できないため、外航貨物海上保険に加入していない場合には、自社にて損害残額を保有する事となります。
【参考 : 海上運送人の責任範囲 】




Q2.引渡しを受けた貨物に損害発覚後、運送人に対しては、いつまでに、通知をしなければなりませんか。

A2.輸送方法により、異なります。損害通知(Claim Notice)の日数は、下記の通りです。

<海上輸送の場合>
国際海上物品運送法 3日以内

ヘーグ・ヴィスビー・ルール
貨物の毀損 7日  /  貨物の延着 14日

<航空輸送の場合>
モントリオール第4議定書・モントリオール条約
貨物の毀損 14日  /  貨物の延着 21日

ワルソー条約・ヘーグ議定書
貨物の毀損 7日  /  貨物の延着 14日




Q3.損害発覚後、運送人に対しては、いつまでに、損害賠償請求(賠償責任の消滅)をしなければなりませんか。

A3.輸送方法により、異なります。出訴期限(裁判上の請求を行なう)は、下記の通りです。

<海上輸送の場合>
国際海上物品運送法
引渡しより1年

ヘーグ・ヴィスビー・ルール
引渡しより1年以内

<航空輸送の場合>
モントリオール第4議定書・モントリオール条約
到着地への到達の日、航空機が到着すべきであった日又は運送の中止の日から2年以内

ワルソー条約・ヘーグ議定書
到着地への到達の日、航空機が到着すべきであった日又は運送の中止の日から2年以内




Q4.自社のBLを代理店に貸出する際、事故起った場合、賠償責任はBL貸出主にありますか?BLを発行した貸出先の代理店にあるのでしょうか。その場合貸出元のBL保険でカバーできますでしょうか?

A4.自社のB/Lを代理店契約した海外代理店に貸与する場合の運送責任は、全て貸出主の責任となります。貸出先とは海外代理契約を締結しているので、代理店契約に基づく契約責任や取次責任などはあるものの、運送責任は一切ありません。よって、B/Lを貸与するのはかなりの高リスクとなります。また、各国で批准している国際条約または、それに準じた国内法が存在しますので、法律に抵触する可能性もあります。
また、B/L賠償保険に加入しているのであれば、B/L賠償保険でのカバーが可能です。しかし、保険金の受取が多くなると保険料UPに繋がる為、注意が必要です。




Q5.L/C取引でClean B/L要求されています。その場合に輸出者(荷送人)がL/I(Letter of Indemnity)の差し入れにてClean B/Lを入手した場合の処理について

A5.売主と買主との売買契約書で、貨物に損害があることを前提とした契約(新古等貨物)になっていることを確認しておくことや荷受人と意思疎通をして貨物に損傷があることをきちんと説明しておくことが重要です。

<荷受人の立場>
「運送開始時に貨物は正常であった」ことが立証できているとして、貨物損害賠償請求または、貨物保険請求を行うことになります。

<荷送人の立場>
L/Iを発行する以上、荷受人が運送人に貨物損害賠償請求をした場合、それを肩代わりしなければならないリスクがあることを認識しておく必要があります。

<運送人の立場>
荷受人との関係では対抗できないことから、荷受人に賠償請求された場合、きちんと荷送人から回収できるような文言にL/Iがなっているのかどうか、実際に荷送人は肩代わりする資力があるのかどうかといったことを確認して、Clean B/L発行・L/I取得を行う必要がございます。 また、荷受人が貨物保険請求を行った場合に保険会社からの代位求償が行われます。

<<保険請求の支払い可否>>
貿易建値がEx.Works / FCR / CIP / CIF等の場合は問題ございませんが、CFR / FOB の場合に損害自体が外航本船に「on board」以前に発生した場合に保険始期前となり、保険金請求ができません。




Q6.Waiver of subrogationでCarrierを対象とできず、Inland Carrierのみ対象となるのは、どうしてですか?

A6.日本が批准した条約(ヘーグ・ヴィスビールールズ)に基いて制定した国内法が、国際海上物品運送法(COGSA(Carriage of Goods by Sea Act)です。国際海上物品運送法に明示されていない場合は、ヘーグ・ヴィスビールールズに準拠することになります。
ヘーグ・ヴィスビールールズ第3条8項には、下記の様に規定されています。

Article III
8. Any clause, covenant, or agreement in a contract of carriage relieving the carrier or the ship from liability for loss or damage to, or in connection with, goods arising from negligence, fault, or failure in the duties and obligations provided in this article or lessening such liability otherwise than as provided in these Rules, shall be null and void and of no effect. A benefit of insurance in favour of the carrier or similar clause shall be deemed to be a clause relieving the carrier from liability.

<要約と解説>
「保険の利益を運送人に譲渡する条項またはこれに類似するすべての条項は、運送人の責任を免除するものとみなす。」とされています。そして、その前文で、運送人の利益を免除する条項は無効とする旨規定されています。
従いまして、保険の利益を運送人に譲渡する条項またはこれに類似するすべての条項は無効とされるものと解釈されます。
荷受人との関係では対抗できないことから、荷受人に賠償請求された場合、きちんと荷送人から回収できるような文言にL/Iがなっているのかどうか、実際に荷送人は肩代わりする資力があるのかどうかといったことを確認して、Clean B/L発行・L/I取得を行う必要がございます。



Q7.Q6のCarrierには利用運送人(NVOCC)も含まれるのでしょうか。

A7.日本国に於いて利用運送人の認可を得てHouse B/L発行する訳ですから、裏面約款にはヘーグ・ヴィスビールールズ準拠する条項が記載されています。従って、免責条項の無効は適用されます。




ご質問のある方は、こちらよりお願いいたします。

ご質問の内容をホームページに掲載させていただく場合もございますので、ご了承ください。

Page top