外航貨物海上保険案内

Institute Cargo Clauses 1963–2009 | 外航貨物海上保険の解説・Q&A・ICC条項全文

Incoterms® 2010―貿易売買条件の種類と売主買主の義務関係

このページはIncoterms® 2010の旧版解説資料です。

現行のIncoterms® 2020については、

Incoterms® 2020―貿易売買条件の種類と売主買主の義務関係

をご覧ください。

Incoterms® 2010を指定して締結された過去の売買契約、
継続取引、貨物事故、保険金請求、求償その他の確認資料として、
2010年版の内容を引き続き掲載しています。

貿易は異国間取引であるため、
当事者間で言語、商慣習、法律、輸送実務等が異なります。
そのため、トラブルを未然に防止するには、
seller(売主)とbuyer(買主)が共通して理解できる
売買契約上の取引条件を明確にすることが重要です。

国際商業会議所
(International Chamber of Commerce:ICC)は、
国際取引条件としてIncoterms®
(International Commercial Terms)を定めています。

Incoterms®は1936年に制定され、
その後、国際貿易、物流、輸送方法、商慣習等の変化に応じて
改定されてきました。

本ページでは、
Incoterms® 2010における
seller・buyerの義務、危険移転、通関、
貨物海上保険との関係等を解説します。

目的

Incoterms®の目的は、
外国貿易における取引条件の解釈について
一定の国際的なルールを提供することです。

具体的には、売買契約におけるsellerとbuyerの義務について、
貨物の引渡し、輸送手配、費用負担、輸出入通関、
危険の移転時期等を整理します。

特徴

Incoterms®は国際条約そのものではありません。
そのため、売買契約で使用する場合には、
適用するIncoterms®の版を明確にしておくことが重要です。

また、Incoterms®は、
物品の所有権移転、代金決済、
契約違反の効果、準拠法、裁判管轄等、
売買契約のすべてを規定するものではありません。


Incoterms®が定める貨物の危険移転と、
所有権の移転は別の問題です。

売買契約その他の契約条項もあわせて確認する必要があります。

1.売主・買主のそれぞれの義務

Incoterms® 2010では、
各取引条件についてsellerとbuyerの
引渡義務、運送手配、費用負担、
輸出入通関、危険移転等の関係が整理されています。

Incoterms 2010 売主・買主の義務関係

2.Incoterms® 2010の取引規則

① すべての輸送手段のための規則

Rules for any mode or modes of transport

EXW「工場渡条件」
Ex Works (...named place of delivery)
指定引渡地
FCA「運送人渡条件」
Free Carrier (...named place of delivery)
指定引渡地
CPT「運送費込条件」
Carriage Paid To (...named place of destination)
指定仕向地
CIP「運送費保険料込条件」
Carriage and Insurance Paid To (...named place of destination)
指定仕向地
DAT「ターミナル持込渡」
Delivered at Terminal
(...named terminal at port or place of destination)
仕向港又は仕向地における指定ターミナル
DAP「仕向地持込渡」
Delivered at Place (...named place of destination)
指定仕向地
DDP「仕向地持込渡(関税込み)条件」
Delivered Duty Paid (...named place of destination)
指定仕向地

② 海上及び内陸水路輸送のための規則

Rules for sea and inland waterway transport

FAS「船側渡条件」
Free Alongside Ship (...named port of shipment)
指定船積港
FOB「本船渡条件」
Free on Board (...named port of shipment)
指定船積港
CFR「運賃込条件」
Cost and Freight (...named port of destination)
指定仕向港
CIF「運賃保険料込条件」
Cost, Insurance and Freight (...named port of destination)
指定仕向港

3.リスク移転の時期

Incoterms®では、
sellerからbuyerへ貨物の滅失・損傷の危険が
移転する地点が取引条件ごとに異なります。

特にCPT、CIP、CFR、CIFでは、
sellerが運送費等を負担する地点と、
buyerへ貨物危険が移転する地点が一致しないため注意が必要です。


Incoterms 2010 リスク移転時期

※画像をクリックすると大きい画像が別ウィンドウで開きます。

4.通関及び許認可手続の義務

EXW CIP / CPT / FCA FAS CIF / CFR / FOB DAP DAT DDP
輸出通関
(仕出国)
buyer seller seller seller seller seller seller
輸入通関
(仕向国)
buyer buyer buyer buyer buyer buyer seller

EXWでは、原則としてbuyerが輸出通関を行う構造となります。
一方、DDPではsellerが輸入通関まで行うことになります。

実際の国際取引では、
外国buyerが輸出国で輸出者として手続することや、
外国sellerが仕向国で輸入通関を行うことが
制度上又は実務上困難な場合もあります。

Incoterms®の選択では、
契約上の義務だけでなく、
実際に当事者がその国で輸出・輸入通関を行えるかも
確認する必要があります。

5.貨物海上保険との関係

Incoterms® 2010では、
CIP及びCIFについてsellerに貨物保険の手配義務があります。

それ以外の条件では、
Incoterms®そのものが一方当事者へ
貨物保険加入を義務付けているわけではありません。

ただし、実際の輸送では、
seller又はbuyerが自ら負担する貨物危険に応じて
貨物保険を手配することが重要です。

条件 Incoterms®上の保険手配義務 貨物保険実務上の基本的な考え方
EXW なし 引渡し後の危険を負担するbuyer側で保険手配を検討します。
FCA なし carrier等への引渡し後のbuyer側危険について保険手配を検討します。
CPT なし sellerが運送費を負担しても、危険移転後はbuyer側の貨物危険となります。
CIP seller sellerがbuyerのために貨物保険を手配します。
DAT なし 指定ターミナルでの引渡しまでsellerが危険を負担します。
DAP なし 指定仕向地での引渡しまでsellerが危険を負担します。
DDP なし 指定仕向地での引渡しまでsellerが危険を負担します。
FAS なし 本船船側への引渡し後はbuyer側で保険手配を検討します。
FOB なし 本船上での引渡し後はbuyer側の貨物危険となります。
CFR なし sellerが仕向港まで運賃を負担しても、危険移転後はbuyer側の貨物危険です。
CIF seller sellerがbuyerのために貨物保険を手配します。
【貨物海上保険上の重要点】
Incoterms®上の危険移転地点と、
実際のInsurance Policyにおける保険始期・終期は
同じ概念ではありません。

貨物事故が発生した場合は、
Incoterms®だけではなく、
Insurance Policy、Insurance Certificate、
適用されるInstitute Cargo Clauses、
Transit Clause等も確認する必要があります。

6.各条件の概要

EXW「工場渡条件」

Ex Works (...named place of delivery)
指定引渡地

  • sellerが輸出通関を行わず、
    また受取のための車両への積込みを行わず、
    sellerの施設又はその他の指定場所
    (工場、製造所、倉庫等)で貨物をbuyerの処分に委ねる条件です。
  • buyerは引渡しを受けた後の貨物の滅失又は損傷について危険を負担します。
  • buyerは引渡し後の貨物に関する費用を負担します。

FCA「運送人渡条件」

Free Carrier (...named place of delivery)
指定引渡地

  • sellerが輸出通関を行い、
    指定場所でbuyerが指定したcarrier等へ貨物を引き渡す条件です。
  • 危険移転は通関時点ではなく、
    貨物がcarrier等へ引き渡された時点を基準に判断します。
  • buyerは引渡し後の貨物の滅失又は損傷について危険を負担します。
  • コンテナ貨物や複合輸送で利用される重要な条件です。

CPT「運送費込条件」

Carriage Paid To (...named place of destination)
指定仕向地

  • sellerは指定したcarrierへ貨物を引き渡し、
    指定仕向地までの運送契約を締結します。
  • sellerが仕向地まで運送費を負担していても、
    貨物危険はcarrierへの引渡し時点でbuyerへ移転します。

CIP「運送費保険料込条件」

Carriage and Insurance Paid To (...named place of destination)
指定仕向地

  • sellerは指定したcarrierへ貨物を引き渡し、
    指定仕向地までの運送契約を締結します。
  • buyerはcarrierへの引渡し後の貨物危険を負担します。
  • sellerはbuyerのために貨物保険を手配します。
  • コンテナ輸送及び複合輸送にも使用できる条件です。

DAT「ターミナル持込渡」


Delivered at Terminal
(...named terminal at port or place of destination)

仕向港又は仕向地における指定ターミナル

  • 指定仕向港又は仕向地の指定ターミナルで、
    輸送手段から貨物を荷卸しした後、
    buyerの処分に委ねた時点でsellerが引渡義務を果たします。
  • 輸送手段は船舶に限定されません。
  • 輸送手段からの荷卸し費用はsellerが負担します。
  • 輸入通関はbuyer側の義務となります。
DATはIncoterms® 2010の規則です。
現行のIncoterms® 2020では、
DATはDPU(Delivered at Place Unloaded)へ変更されています。
現行取引については

Incoterms® 2020の解説

を確認してください。

DAP「仕向地持込渡」

Delivered at Place (...named place of destination)
指定仕向地

  • 指定仕向地において、
    輸入通関前の貨物を、
    荷卸し準備ができた到着輸送手段上でbuyerの処分に委ねる条件です。
  • 輸入通関費用はbuyerが負担します。
  • 到着輸送手段からの荷卸しはbuyer側となります。

DDP「仕向地持込渡(関税込み)条件」

Delivered Duty Paid (...named place of destination)
指定仕向地

  • sellerが指定仕向地まで貨物を輸送し、
    輸入通関を行ったうえで、
    到着輸送手段から荷卸しする前の状態でbuyerへ引き渡す条件です。
  • sellerは原則として輸入関税を含め、
    指定仕向地までの輸送に伴う費用と危険を負担します。
  • EXWがsellerにとって最小の義務を示すのに対し、
    DDPはsellerの義務が最も大きい条件です。

FAS「船側渡条件」

Free Alongside Ship (...named port of shipment)
指定船積港

  • sellerは指定船積港において、
    buyerが指定した本船の船側に貨物を置くことにより引き渡します。
  • buyerは引渡し後の貨物の滅失又は損傷について危険を負担します。

FOB「本船渡条件」

Free on Board (...named port of shipment)
指定船積港

  • sellerが指定船積港において、
    buyerが指定した本船上に貨物を置くことにより引き渡す条件です。
  • 貨物が本船上に置かれた後の滅失・損傷の危険はbuyerが負担します。

CFR「運賃込条件」

Cost and Freight (...named port of destination)
指定仕向港

  • sellerが船積港において本船上に貨物を置くことによりbuyerへ引き渡します。
  • sellerは指定仕向港までの海上運送契約を締結し、運賃を負担します。
  • sellerが仕向港まで運賃を負担していても、
    貨物危険は船積港での引渡し時点でbuyerへ移転します。

CIF「運賃保険料込条件」

Cost, Insurance and Freight (...named port of destination)
指定仕向港

  • sellerが船積港において本船上に貨物を置くことによりbuyerへ引き渡します。
  • sellerは指定仕向港までの海上運送契約を締結し、運賃を負担します。
  • 貨物危険は船積港で本船上に置かれた時点でbuyerへ移転します。
  • sellerはbuyerのために貨物海上保険を手配します。
外航貨物海上保険との関係

Incoterms®における費用負担、
危険移転及び保険手配義務はそれぞれ分けて考える必要があります。

CIFではsellerが仕向港までの運賃と保険を手配しても、
貨物危険は船積港でbuyerへ移転します。

この点は貨物保険の事故処理でも重要で、
seller・buyerのどちらが事故時点で貨物危険を負担していたかと、
実際のInsurance Policyがどの区間を補償していたかを
それぞれ確認する必要があります。

7.Incoterms® 2020との関係

本ページはIncoterms® 2010の内容を保存した旧版資料です。

その後Incoterms®は2020年版へ改定され、
DATがDPUへ変更されるなど、
一部の規則・保険条件・実務上の取扱いが変更されています。

現在の新規取引については、
原則として適用するIncoterms®の版を契約書へ明記したうえで、
現行版の内容を確認してください。

また、外航貨物海上保険との関係については、
次の専門記事もあわせてご覧ください。

8.まとめ

Incoterms® 2010は、
sellerとbuyerの貨物引渡し、運送、費用負担、
輸出入通関及び危険移転等を整理する国際取引規則です。

2010年版を使用して締結された売買契約については、
事故、保険金請求、求償、契約上の責任等を確認する際にも、
当時適用されたIncoterms® 2010の内容を確認する必要があります。

特に貨物海上保険実務では、

費用負担、危険移転、保険手配義務、
実際の保険期間を混同しないこと

が重要です。

現行取引についてはIncoterms® 2020を確認し、
過去の2010年版契約については本ページを旧版資料として参照してください。

※詳細については、
当該契約で適用されたIncoterms® 2010の原典、
売買契約書、運送契約及びInsurance Policy等をご確認ください。